BWTWB/木材の乾燥について
木製品の魅力の一つに木の表情や質感を挙げることができます。
写真や言葉ではなかなか伝わりにくいような部分なので一つ物差しを用意します。
『乾燥の方法』
人工乾燥なのか天然乾燥なのか
木材をやりとりするときには『生木』『乾燥材』の二つがあります。
『生木』は伐採後間もない丸太であったり、伐採した丸太を製材して間もないまだ水分をたくさん含んだ状態。
『乾燥材』は家具なんかに使用するのにすぐに使えるような状態まで乾燥が進んだ状態。
そして、『生木』から『乾燥材』となるためのルートとして『人工乾燥』と『天然乾燥』があります。
じゃあその二つの乾燥方法の違いってなんでしょうか。
『人工乾燥』にも多様な方法論や設備があるのでかなりざっくりとした説明だけにとどめますが
まさに文字通り人工的に熱や水分をコントロールして短時間で強制的に乾燥状態へ持っていくという乾燥方法です。
一方、『天然乾燥』は時間はかかりますが自然に任せて乾燥していくのを管理していく方法です。
比較すると大きな違いは乾燥にかける単位時間当たりの熱量とタイミングの違いと言えます。
それが木の表情や質感にどう影響するのかというのがここでのお話です。
ところで、樹木ってどのように生命の停止の時点を位置付けるのでしょうか。
これは非常に難しいことのように思えます。木材になってもずっと『木は生きている』とかの表現がされますが
比喩だったとしても僕は口に出す気にはなれません。
じゃあ、伐採されてからはどのようなことが木に起きているのか。これは木の内部で何が起こっているのかを知らないと始まりませんね。
このあたりの研究は国内外を見てもあまり手がつけられていないようです。
日本では前回のブログでもお名前を紹介しましたが、阿部藏之さんが「木の内科」として長年、克明な記録を取り研究されています。
阿部さんご本人からのお話や私見などを交えて伐採後からの木の内部で起こっていることをざっくりと言いますと
伐採すると切断による生体防御反応が起こり、それぞれの樹種の持つ酵素や抗体が広がり、水分の移動とともに色素の移動などが起きるようで
生命活動はしばらく維持されている状態と言えます。
伐採後、放置した状態だと、今まで吸い上げていた水分や養分が底をつくまで
時間をかけてゆっくりと生命の停止へと向かっていくイメージです。その間約2〜3年。
その後は木の内部構造などによる水分の吸排出作用、それに伴う寸法変化、香りの放出などが物理的な作用で起こり
生きていると思わせるような動きをするのだと考えます。
長くなりましたが、私は、木の生命活動は伐採後2〜3年の間は続いていると考えています。
何が言いたいのかというと、天然乾燥という手法は、伐採後の木の生命活動をゆっくりと終わらせ、細胞への急激な熱ストレスをかけない乾燥。
一方、人工乾燥という手法は、まだ生命活動がある状態で強制的に熱乾燥させて細胞の破壊が避けられない乾燥である。
木材の表情や質感が良いのはどちらなのか、写真に映っているものからは伝わりにくいけれども、実際に見て触れると、この意味がよくわかる。
熱により細胞が生きている状態で強制的に水分を抜かれていく。
いくら樹木の細胞壁がセルロースやリグニンなどの硬い壁から成っているとしても、まだ生命活動が営まれている細胞が破壊されていくのは想像に難くない
ひいては木材、家具になって質感や艶に落とす影は深く触覚にも訴えてくる。
ちょっとドラマチックに書きすぎましたが
天然乾燥材を出来るだけ選び、丸太からの天然乾燥をストックヤードで管理していくことの大事さを実感し
BWTでは出来るだけ天然乾燥の材を使用し、その良さを実感してもらえるように制作しています。