Profile
日々の所作を美しくするために、
“座る”という行為そのものに、ひとつの場を与える。
出雲大社の東部、かつて神事の楯が作られていたと伝わる土地「楯縫(たてぬい)」に
静かに佇むアトリエ Bench Work Tatenui があります。
ここでは、ベンチという名の家具を通して、人と空間の呼吸を整えるような作品を生み出しています。
制作の軸には、京都で修行した「京指物」の技術。
木の癖を読み、刃を走らせ、人の手によって仕上げる繊細な工芸。
この文化に息づく “構造の美” と “余白の思想” は、私の中に深く根を張っています。
素材は、天然乾燥されたトレーサブルな木材。
特に くるみ や くり などのフルーツウッドに惹かれ、木が持つ “記憶” と “香り” に耳をすませながら、一つひとつ作品に仕立てていきます。
木はただの材料ではなく、空間と時間に橋を架ける存在だと考えています。
そしてこの土地、出雲・楯縫の空に広がる雲と静かな光が、私の制作に独自の陰影を与えてくれます。
短い日照時間、湿り気を帯びた風、グレーがかった冬の色彩——
それらを背景に生まれる独特の表情を、私は「Tatenui tone」と名付けました。
“道具であり、彫刻であるもの”を
家具は単なる実用品を超え、
空間に置かれることで意識を変える、静かな詩のような存在であってほしい。
たとえば、二人掛けのスツール。
読書の合間に湯気を感じ、窓辺に腰かけて会話が交差する。
そんな時間の背景に、控えめで、それでいて確かな存在感を持つ「座るかたち」があるならば、
その空間には、生活以上の何かが流れ始める気がするのです。
2019年からは、「くるみのたに」という名の植樹プロジェクトもゆっくりと始めています。
苗を育て、実をいただき、オイルを搾り、いつか木材として場を作る。
自然との循環のなかに、“使うこと”と“育てること”が重なり合う未来を、ここから模索しています。
ご一緒できたらうれしいです
“永く使えることは、美しい”。
その価値観を共有できる方と、静かに、深くつながっていけたらと願っています。
もし、あなたの空間に “呼吸する家具” を迎えたいと思ってくださったなら、
どうぞいつでも、出雲・楯縫のアトリエに遊びにいらしてください。
木の香りと、柔らかな陰影のなかで、ゆっくりお話しできれば幸いです。
Bench Work Tatenu|ベンチワーク・タテヌイ
ヒノ タケシ
アーティスト|京指物技術を背景に出雲で活動
ベンチを中心に「座ること」から空間と時間を設計
天然乾燥・トレーサブルな木材を用い、手仕事による空間を制作
